少し紹介が遅くなりましたが、月替りたいやきに今年(2021年)からの新作「さくら白玉たいやき」が加わりました。すでに311日から提供しています。

 桜と言いつつ普通のたいやきと同じ色なのが特徴。誰もがイメージするピンクの桜色要素は皮にも餡にも白玉にもまったくありません。でも、誰に食べていただいても“桜”を強く感じていただけると思います。

 そんな風変わりな桜のたいやきを少し詳しく紹介します。

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■実は出すのをためらっていた「桜」のたいやき

 日本の春と言えば桜。今年(2021年)はあまりお花見という空気ではありませんが、それでも街を歩けば店はピンクに装飾され、桜をテーマにしたお菓子や飲み物などのメニューが目につくようになります。日本人は本当に桜が大好きだと感じます。

 なので桜を使ったたいやきは、月替りたいやきを始めた頃から作りたいと考えていたのですが、一方でふたつのためらいがあり実現することができていませんでした。

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・流行に乗って安易なものを出したくない

ひとつめはどの菓子店でも桜をテーマにしたお菓子を出している中、当店がそれをする必要があるのか、すべきなのかを迷ったからです。たいやき
ともえ庵のメニュー開発の方針のひとつが「他所でやっているものはやらない」ということ。同じテーマでメニューを開発するなら、明確な違いと価値を出せるものにしなくはならないと決めています。色々なお店が取り組まれている桜をテーマに、他所のお店で出されているものより価値のあるものができるか、という葛藤が続いていました。

 

・着色料を使いたくない

 もうひとつの理由は色です。こちらの方が大きな理由なのですが、着色料を使いたくなかったのです。

桜と言えばピンク色。お菓子や食品もピンク色が定番です。実際の桜を見ると、かなり薄いピンクで白に近い色なのですが、江戸時代頃の桜はもっと色が濃かったようで、その色のイメージが定着しているようです。

 当店では食品添加物全般を否定している訳ではありませんが、できるだけ使いたくないと思っています。香料を入れるより割高でも天然の原材料を使いたい、保存料を入れるより賞味期限が短いことを納得していただけるように伝えたいと考えているからです。着色料は見た目をきれいにしてくれますが、味を良くしてくれる訳ではありませんから、使う意味がないと思っています。例えば、赤キャベツ等、通常の食品で色を付けることもできますが、キャベツで染めたものを桜色というのは抵抗があります。

上にも書きましたが、現代の桜は“桜色”をしていません。桜由来のものでピンクの色を付けるのは不可能です。しかし、多くのお客さんは桜の菓子にはピンク色を望まれている・・・。こんな理由で出すことをためらい続けてきたのです。

 

■桜の葉の塩漬けをたっぷりと盛り込むと悩みは解消しました。

 こんな風に悩みつつ試作したところ、悩みは簡単に吹き飛びました。

 桜の風味を出すために桜の葉の塩漬けを刻んでつぶあんに混ぜたところ、びっくりするくらい美味しくなったのです。あえて塩味を残した桜の葉と甘さ控えめの当店のつぶあんの相性が良かったのだと思います。また、桜の葉の塩漬けを惜しまず大量に混ぜ込んだことも良い結果につながりました。

 さらに白玉も入れることにしました。桜の葉と言えば桜餅をイメージするので、餅っぽい食感が欲しかったからです。白玉にも着色料は使わないので色は普通ですが、その代わりに桜の葉の塩漬けをペースト状にして練り込んだ白玉を作りました。

 誰が食べても桜を感じることができる、明らかに美味しいものができたので、もはやピンク色は必要ありません。着色料なしの普通のたいやきの色のまま、自信をもってお出しすることにしました。

 

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 とはいえ、まったく悩みがない訳ではありません。

 桜の葉の塩漬けが意外に高価で、たいやきの原価がかなり掛かってしまうのです。「白玉たいやき」(350円)と「さくら白玉たいやき」(380円)の価格差30円では賄えない量の桜の葉の塩漬けを入れているので、採算性という意味ではかなり問題のあるメニューです。

 でも、コストダウンは後から考えればよいこと。この味のバランスを崩したくないので、とうめんはこのまま出し続けます。

 

■強烈な桜の風味とほのかな塩味が魅力です

「さくら白玉たいやき」を食べる、いえ食べる前に感じるのが桜の風味です。上で説明した通り惜しまずに混ぜ込んだ桜の葉の塩漬けのおかげです。ひと口食べるとさらに強い風味を感じていただけると思います。さらに白玉の部分を食べても、その風味が落ちることはありません。白玉にもペースト状にした桜の葉の塩漬けを練り込んでいるからです。

 

 塩漬けにした桜の葉の塩味を完全に落とさず使用することで、つぶあんに塩味が加わっています。隠し味的に甘みを引き立てる塩味ではありません。甘さを抑えたつぶあんに合って、違った味にしてくれる塩味、優しい甘さと優しい塩味が同居している感じでしょうか。

 考えてみると、今年度になって新たに出した月替りたいやきは、6月の「梅干し白玉たいやき」、10月の「青実山椒たいやき」、そしてこの「さくら白玉たいやき」と3種類とも塩味を使ったもの。意図した訳ではないのですが、ともえ庵の中で塩味が密かなブームになっているのかもしれません。

 おばあちゃんの原宿で知られる巣鴨のとげぬき地蔵は塩大福が名物として知られていますから、もともとあんこと塩味は合うのかもしれません。

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■袋だけピンクの桜っぽいものを使いました

 こんな訳で香りや味は桜感いっぱいのたいやきができましたが、やはり春らしい雰囲気も必要。せめてものピンク色要素として紙袋は桜柄のものを使っています。

 袋自体は業務用に販売されているものなのですが、他の月替りたいやきと同様に桜イメージのスタンプを作って捺しています。このスタンプは、月替りたいやきを召し上がった際に捺す「御鯛印帖」の御鯛印にも使用しています。

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■ポスターは善福寺川の今年の桜です

 20213月の発売開始時点につかっているこのポスター。背景に写っている桜はご近所の善福寺川沿いに今年2月に咲いていたものです。2月に数日だけ暖かい日があったのですが、たまたま善福寺川を通りかかると3本だけ満開の桜の木があり、写真に収めました。

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 このブログ記事をアップするの3月下旬は例年より少し早く桜が満開。

 桜感いっぱいのたいやきをぜひお楽しみください。

 

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