たいやき ともえ庵では、20201011日より新しい月替りたいやき「青実山椒たいやき」をお出しします。

 つぶあんの中に塩漬にした粒山椒を混ぜ込んだたいやき、「山椒は小粒でもぴりりと辛い」の言葉の通り山椒が強烈な個性と存在感を発揮しています。

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10月は二種類の「月替りたいやき」をお出しします

 ともえ庵では毎月11日から翌月9日までのサイクルで違った味の「月替りたいやき」を出してきました。でも実は、10月に関してはこれまで「月替りたいやき」を出さず、定番の「白玉たいやき」を特別割引で提供してきました。

 10月は気温が下がって本格的なたいやきシーズンが始まる時期です。この時期にともえ庵の代名詞にもなっている定番中の定番「白玉たいやき」を食べて、知っていただきたいと考えているからです。価格を50円割引して10月の「月替りたいやき」として提供してきました。

 この50円割引は好評で、これをきっかけに「白玉たいやき」のファンになって下さる方もたくさんいらっしゃいます。しかし、一方で「割引より、毎月違った味が食べたい」というご意見もお客さんからいただいていました。

 そこで、2020年からは恒例の「白玉たいやき50円割引」に加えてもう一種類、裏メニュー的な位置づけで違う味のたいやきをお出しすることにしました。それが「青実山椒たいやき」です。

 詳しくはこの後説明しますが、この「青実山椒たいやき」はかなり個性的な味、好きな人と嫌いな人がはっきりと分かれると思います。なので、一種類だけで「月替りたいやき」にするにはかなり勇気がいるのですが、「白玉たいやき」と合わせて二本建てであればと考えて、この時期にお出しすることにしました。

■和の伝統的な食材山椒

山椒は日本原産の植物です。日本中に広く生育していますが、強い日差しを嫌う性質があるため、日光が遮られる山間に多く見られます。古くから漢方薬や香辛料として用いられているため、栽培もされています。胡椒に似ていることから、ジャパニーズペッパーとも呼ばれています。

山椒は葉も実も食用になります。葉は“木の芽”と呼ばれ、香りを楽しみます。山椒の若い葉と昆布の佃煮「木の芽煮(きのめだき)」は京都の鞍馬の名物です。

若い青実(青実山椒)はそのまま加工して食べられます。「ちりめん山椒」が有名ですが、山椒好きな人には山椒の佃煮が好まれます。成熟した実は乾燥させて粉山椒として調味料になります。

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山椒の木(左)、鰻丼に添えられる「木の芽」(右)は山椒の葉です。(写真はネット上からお借りしました)

青実山椒の味はなかなか言葉で表現することが難しい味です。「小粒でもぴりりと辛い」とあるように辛みではありますが、辛子とも唐辛子とも違います。ジャパニーズペッパーと呼ばれるとおり、胡椒とは似ていますがやはり違います。麻婆豆腐の“麻”、しびれる味わいを出している中国の花椒も山椒の仲間です。しびれる味という意味では同じですが、やはり日本の山椒の味は明らかに違う独特なものです。

さらに言うと、同じ山椒の木に生った山椒の実でも、青実山椒として食べるのと乾燥させて粉山椒にしたものでは全く違います。

青実山椒の味をあえて言葉にするなら、「しびれる辛みと爽やかな香り、そして若い青実が持つフレッシュさが合わさった味」ということころでしょうか。とにかく存在感がある味です。

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■つぶあんと山椒を合せたたいやき

ともえ庵では、以前から「月替りたいやき」として、和の食材をつぶあんに合わせてきました。特に最近は、甘味素材以外のものを視野に入れ、つぶあんの新しい可能性を模索しています。その中で、今年6月には「梅干白玉たいやき」を出しました。梅干しに続く、あまり菓子に縁のない素材として以前から注目していたのが青実山椒です。

とはいえ、山椒に関してはまったく菓子に使われてこなかった訳ではありません。有名なショコラティエがチョコレートに合わせた例はかなり知られています。また、ケーキやクッキーなどにも仕上げにアクセントを効かせる調味料として粉山椒が使われることがあるようです。

ただし、これらは粉山椒なので、青実山椒は使っていません。知る限り唯一の青実山椒を使った菓子は、京都の有名料亭でコースのデザートとして出されたものです。煎餅に挟んだ白餡に青実山椒を合せてありました。

ただ、青実山椒はかなり味が強い素材ですので、食事の後に少しだけ食べるデザートには向いても、菓子としては大きなたいやきに入れるとなると工夫が必要でした。

ともえ庵では、下処理をした青実山椒を保存のために塩漬けにしていますが、その塩分を活かして、つぶあんにほのかに塩味をつけ、その後に山椒の辛みや痺れを感じられるように調整することでたいやきに仕上げています。

それにより、最初のひと口から今までのたいやきでは感じることができなかった味わいになりました。

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下処理をした青実山椒に塩をまぶして保存します

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つぶあんに混ぜ込んだ青実山椒

■「裏の月替りたいやき」としてお出しします

 ただ、それでもメニュー化には悩みました。青実山椒に存在感がありすぎて好みが分かれるのが間違いないからです。どれほど美味しく仕上げても、もともと山椒が嫌いな人には食べられないたいやきになってしまいます。せっかくの「月替りたいやき」なのに山椒が苦手な人はまったく食べることができないのは申し訳ないことです。特に今年からは「御鯛印帖」を始めているので、スタンプ「御鯛印」を集めている人に食べられないたいやきをご用意するのは良くないとも考えました。

 ところが、説明した通り10月は「白玉たいやき50円割引」があるため、二つ目の「裏の月替りたいやき」としてお出しするなら、個性が強くても構わないのではと考え、実現に踏み切りました。

■強烈な山椒の個性をお楽しみください

「青実山椒たいやき」をひと口食べると、つぶあんにほのかな塩味が感じられ、その後に強烈な青実山椒の味が追いかけてきます。その後は、青実山椒の刺激の中でつぶあんを味わうことになります。さらに食べていると口の中に心地よいしびれが残ります。

 味を決める際に、この痺れをどの程度感じられるようにするか、店内でも意見が分かれました。しかし、山椒が好きな人に応えられる味にするため、かなり痺れが感じられる味に仕上げてあります。

おすすめは、「青実山椒たいやき」を食べた直後に冷たい水を飲むことです。口の中から喉にかけてスーっと冷える強烈な清涼感を味わうことができます。それは少しミントに似ていて、でもミントとは明らかに違う青実山椒独特の味わいです。

 食べてしばらく経つとまた山椒の刺激が欲しくなる、そんな味でもあります。

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「青実山椒たいやき」の断面、一見山椒が少ないように見えますが、これでかなりの辛みになります

とはいえ、「青実山椒たいやき」は、好き嫌いが分かれる味です。山椒自体が好き嫌いが分かれる食材なので仕方ありません。調味料として使用する粉山椒は多くの人に好まれますが、直接味わう青実山椒は個性の強い味だからです。

 なので、単に好きではなく味にハマる人も何割かいます。そんな人にとっては、「青実山椒たいやき」は他に替え難いものに感じていただけるのでは、と思っています。

■想像できない美味しさを目指しています

 上にも書いたように当店ではこれまで様々な食材をつぶあんに合わせ、「月替りたいやき」に仕立ててきました。

 とはいえ、それらの素材の多くはゴマや生姜、酒粕のように既に和菓子の材料として使われているものか、そのまま食べても美味しい果物がほとんどでした。言い換えれば、もともと美味しいと知られている組み合わせや、「美味しいものに美味しいものを混ぜたらもっと美味しい」というレベルの組み合わせだったと思います。

 その中で、大きな曲がり角となったのが今年、20206月に出した「梅干白玉たいやき」でした。梅干はそのまま食べても美味しいものですが、あくまで食事の素材で、菓子としてまたはデザートとして食べられることはありません。なので、たいやきに梅干を入れるというとかなり驚かれました。ゲテモノのように受け取られかねないのですが、実際に食べてみると美味しい。予想を覆す味に仕上がっています。

「青実山椒たいやき」はそれに次ぐ位置づけのメニューです。和の素材ではありますが、菓子の材料と受け取られることがない山椒を、予想を覆す味に仕上げたつもりです。

 どうなのかと思って食べたら意外に美味しい、そんなレベルは狙っていません。好みが分かれつつも、ハマる人にとっては何よりも美味しいと感じる、これができてこその「月替りたいやき」だと思っています。

 とはいえ、それはこちらが勝手に設定した目標です。どの程度実現できているか、機会があればお試しください。

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青実山椒がいっぱい入った”最後のひと口”、部位により入っている山椒の実の量に偏りがあり、味の複雑さになっています。